招集の早鐘のように夜中に重く足音が過ぎて行った つまり俺たちも出発だ、言葉なく別れを告げて 踏み慣れぬ道を踏んで行った、馬どもが、馬どもが 乗り手にどんな事が待ち受けているか知りもしないで 俺たちの時代は別の、すさまじい時代 だが幸せは昔のように探せ ! だから俺たち、逃げゆく幸せを追って飛んでいく だがこの疾走の中で最良の仲間を失っていく 疾走中は気づきもしないで、隣の友がいなくなったことに これからも長いこと灯を火事と見まがうことだろう 長いこと軍靴の音にぞっとし統けることだろう 子供は戦争の遊びをし それを『戦争ごっこ』という古い名で呼ぶだろう 人びとをを相変らず敵味方に分け続けることだろう だが、戦火が止み、燃えつき、泣きあかしたあとは 俺たちの馬が俺たちのドで走り疲れたあとは 娘たちが兵隊外套をヮンピースに着換えたあとは 忘れまいぞ、乞うまいぞ、失うまいぞ
© 宮沢俊一. 翻訳, ?