ここは、平地じゃない、 気候も違う 雪崩が起きる つぎつぎと。 それにここは唸り 落石また落石の。 帰ったっていい、 断崖を避けるもいい、 だけど俺たち、困難な道を選ぶ 危険な道を、戦争のような道を。 ここに来たことない者 危険を冒さなかった者 そいつは自分を、 ためさなかった奴。 いくら下界で 栄光の星をつかもうと 下界では出会えない いくら頑張ろうと 自分の幸せな全生涯の中で この美と奇跡の十分の一にも。 赤いバラはなく、 喪章もない。 似てもいない 記念碑には、 あの岩、 君に安らぎを与えた岩は。 永遠の火のように 昼間は輝く、 山頂が、エメラルド色の氷で まだ極めていない山頂が。 言わせとけ 勝手に言わせとけ いや、誰だって 無駄死なんかするか... この方がいい、 ウォトカや風邪で死ぬより ! 別の奴が来るさ 快適さを危険や 度外れの困難と取り替えて、 君が行けなかった道を引き継ぐさ。 絶壁だぞ、 気を抜くな ! ここじゃ幸運を 喜ぶのは早い。 山では頼りにならない 石も、氷も、岩も 期待していいのは 腕の強さ 友の腕と打ち込んだハ一ケン そして祈ろう、ザイルが切れないように。 足場を刻み 後へは退かぬ、 緊張のあまり 膝は震える。 心臓は胸を飛び出し 山頂へ飛んで行きたそう 全界を手中に収めた ! 君は幸せに黙り込む そしていささか羡む 他の連中を、 山頂がまだ前途にある連中を。
© 宮沢俊一. 翻訳, ?